おはやめに
肺ガンは得意といってもいいかもしれないものではありますが、あまりに大きなかたまりができてしまい肺からはみ出すほどになりますと、胸郭までやられてくるので、痛みがひどく施術が困難です。手で触れただけでのたうちまわるほど痛がりますから。胸水がたくさん出て痛がる場合も同じく痛みがひどく、施術は困難になります。
ひどい痛みさえでていなければ、たとえ末期といわれようと、酸素ボンベをひきずってこられようと、まだ寛解方向にむかう可能性が大きいので、おはやく受診してください。
最近の傾向
最近はジオトリフ、タルセバなど、分子標的薬を併用して施術を受ける方が多くなりました。抗ガン剤の一種ではありますが、免疫へのダメージが少なくてすむようですし、多少施術間隔をあけても、その時点その時点での現状維持をしっかりやっててくれるので、ぶり返しがとても少なくてすみ、施術効果の上に施術効果を足し算で積み上げていくことができて、改善がはやいです。
また、通常の抗ガン剤ですと、施術をくり返しても体温が上がることはほとんどありませんが、分子標的薬の場合はけっこう上がります。それだけ免疫が残っていて、自力でガンをやっつけようとする力がはたらくからでしょう。
こういったよく効くお薬を用いて寛解まで至った場合、肺には石灰化したものが残らないので、そういう意味でもとてもよいです。
治癒熱
肺ガンが寛解に向かっていくと、最後の段階で、施術中に肺全体がカーッと熱くなる人がよくいらっしゃいます。弱くなったガンの力にたいして、これならやっつけられるとばかり、身体がカサにかかって攻めたてているように、私には思えます。
肺ガンだけではなくて、他のガンでも起きますが、なぜか肺ガンに多い現象です。
寛解に近くなると出るので、わたしはこういう施術中に出る臓器単独の熱のことをとくべつに「治癒熱」と呼んでいます。
通常、施術していくと早期に体温が1℃くらい上がったりしますが( → 治癒反応)、これとは別にさらにあがります。
患者さんはもちろん大汗をかいたり、上気した顔で「なんだか熱いです・・」と、びっくり目になってますが、わたしだって患者さんの熱っけがつたわってきて、あかい顔をして汗かいてます。
こういう現象が起きたあとは、肺のあちこちに残っていた小さな手ごたえはきれいになくなっており、
「やりましたね。これですっかりよくなったんじゃないですか・・?」
なかなか言えなかったそのひと言が、はっきり言えるようになるわけです。
この現象、マルトの方にも起きたことがあります。
また、肺ガンを手術して再発防止施術を受けている方にもよくおきます。
おもしろいのは、乳ガンの方でその胸の施術をしているとき、肺の治療をしたつもりはなかったんですが、肺が治癒熱を発したことがあります。すでに肺にこまかく転移していたのが施術によって燃えたのではないかと思います。
サイトのどこかに書いたかもしれませんが、肺は大腸などにくらべ、物質的密度の低い臓器です。それゆえ、術がとおりやすく、効きやすいのかもしれません。
なので、よけい寛解の発熱がおきやすいのでしょう。
ただし、抗ガン剤をやっている方、あるいはその影響が残っている方には、こうした現象は起きませんから念のため・・
たとえCTでガンが見えないくらい小さくなっていても、免疫が脆弱なうちはムリ。
→ 治癒熱
例
ジオトリフ併用で、脳転移のあった肺ガンの方。30代の女性。この記事を書こうと思い、1年半以上前の初回のメールを読み返してみると、 「肺腺癌ステージ4で余命1年程と宣告されました」 とありました。 若い女性にたいして、ずいぶん厳しい宣告があったものですが、ジオトリフなどの治療を何も受けなければそうなってしまうよという、警告をこめてのものだったのかもしれません。
その後、初回の施術を終えたあとの感想として、
「朝起きてから、頭がすっきりしております」
「鏡をみたら顔(特に鼻とあご)の赤みが引いておりました」
といったメールもありました。
施術を受ける前は頭が重く、痛みも出ていたそうですが、そういったものはすぐに解消できたようです。顔の赤みというのはジオトリフの副作用でしょう。それもおちついたみたいです。
MRIの画像を見てみると、痛みが出ているわりには脳の腫瘍は小さなものでした。だいたいあるていど高齢の方の場合、脳の萎縮が起きておりすき間ができている状態なので、脳腫瘍ができてもけっこう大きくなるまではそうした症状は出ないものではありますが、彼女の場合は若くて脳が頭蓋にぎっしりなので、まだ腫瘍は小さいのに頭重や痛みまで出ていたわけなのでしょう。
余命宣告までされていて危機感があったためでしょうか、週3回受診されることをご希望されました。 1か月後検査があり、縮小していることが確認でき、とても安堵されたようだったのが印象に残ってます。
2か月後のメールでは、まだ呼吸すると違和感があるとの記述がありますが、これが肺についての最後の自覚症状だったかもしれません。これもやがて急速に改善していきました。
その後半年くらいあとの検査画像では、肺はもうすっかりきれいになっているようでした。いちばん最初のサイズは確認してませんが、肺のはけっこう大きかったと記憶してるのですが、それがきれいに消えていったというのはやはりジオトリフの効きめでしょう。 経過はたいへん順調に推移していたのですが、いささか勇み足がありました。
この患者さん、ジオトリフがいやでしょうがなかったようです。顔には変なデキモノができるし、手足の爪のあたりが変になるしというわけで。
それで、施術を受けはじめて半年ちょっとで、検査画像でほとんどガンは消えたと感じられたため、ジオトリフを飲むのをやめてしまいました。
しかし、まだちょっと早かったのかもしれません。
さらに半年後の検査で、以前あって薄くなっていた脳腫瘍は消えたものの、新たなものができたとのことでした。肺のほうは何もなし。
で、ジオトリフをやめていたと打ち明けたらこっぴどく怒られたとのこと。でも、それについても、
「ガンマナイフで消そうとお医者さんが脅かすんですよ。ガンマナイフは絶対イヤだ」
というのが彼女の思いでした。
ガンマナイフやられるよりはジオトリフを飲んだ方がいいというわけで、しかたなくまた服用を再開されました。
ジオトリフは、まだ効いているうちにやめたほうが、万一再発した場合また飲んで効かせることができるからいいのではないかというのが私の感覚でもあります。
そういう感覚はあっても、やめたり再開したりというのは患者さんご自身の判断にはなりますが。
お医者さんとしては、ずっと飲み続けろと言うのでしょうが、それではジオトリフがバカになって効かなくなったらあとの分子標的薬はタグリッソしかなくなってしまいます。過去に当院へいらした患者さんの服用経緯から、タグリッソは効く人効かない人がはっきりするような印象があり、効かなければ先の行き場が少なくなってしまいます。
結局この方の場合はそのあと20ミリの弱いのに変えてもらって、それを半年近く飲み続け、今回新たな脳腫瘍も消えていることが確認できたというわけです。
※重要付記
上記の方、その後脳腫瘍が再発。それも複数いっせいにできたため、とうとうあれほどイヤがっていたガンマナイフをお受けになりました。手痛い失敗です。くやしくて身体の一部が引きちぎられるような感覚になりました。断腸の思いというやつでしょうか。
ふり返って反芻してみると、どうもその再発のMRIを撮る少し前、脳を施術すると「頭が熱い」「頭が熱い」と言って、真っ赤な顔をして大汗をかいていらっしゃったのを思い出します。私はそんなに熱いんじゃかわいそうだと思い、施術のパワーをゆるめたことが幾度かありました。
もしかするとあの「熱い」は治癒熱で、あの局面では手をゆるめるのではなく、逆にさらなるハイパワーで押しきるべきだったのかもしれない・・と、心の中でグチってしまうこのごろです。
例2
先ごろ、肺ガンの治療および再発防止にずっと通っていた方が、当院を「卒業」なさいました。治療の際には、ジオトリフではない通常の抗ガン剤を使っていたこともあったそうです。50代男性。 治療をはじめたときは5センチと3センチのがあり、他にいくつか小さいのもちらばってました。
当初、脳にも5~10ミリくらいの転移がいくつもあり、頭はすでにガンガンしていたようで、けっこう痛がってました。咳もまだ軽い上すべりするようなものでしたが、さかんにしてました。年齢からいってもいかにも進行が早そうで、ヤバいといった感じでした。
ご本人は、あまり口には出しませんでしたが、おそらくは余命なども言われており、最悪の事態を想定していたことでしょう。
最初のころはしょっちゅう空いてる予約時間はないかとお問い合わせがあり、夜おそくてもかまわず、ほとんど毎日のように受診なさったものでした。
すこし余裕が見え始めたのは、数回の受診で咳がすっかり消え、頭の痛いのもなくなったころでした。そうした、だれの目にもあきらかな症状の好転を得て、明るい笑顔を見せてくれるようになり、あとは週に2、3回の割合で通院。
2年以上かかりましたが、ガンが CT画像上から消え失せたとのご報告をしていただくことになりました。寛解までたどりつきました。
そのときの、顔を輝かせガッツポーズしたお姿がうれしくて、忘れられません。
まじめな方で、そのあとも再発防止に4年ほど通われました。
それだけ受けてくれればもう安泰。
例3
ひとり終わったなあとほっとしている間もなく、その卒業なさった方ととてもよく似た病状の方が来られました。ジオトリフが効かなくなって通常の抗ガン剤に切り換えたとのこと。転移の状態もほぼ同じですが、卒業なさった方よりずっと若い、やはり男性。この方もまじめに通ってくださったので、順次軽快していきました。
塊としてのガンは小さいものでしたので、けっこう早期に消えました。しかし、この方は表面上うれしさはあふれさせていましたが、慎重に再発防止施術を受け続けていらっしゃいます。ガンの治療に慎重さ、ねちっこさは必要です。この方もほぼ寛解といっていい状態ではありますが、まだしっかり通っていらっしゃいます。
しかし、病状が同じであって、おなじように施術を受けたからといって、同じようにガンを撃退できるかどうかはわかりません。
個体差があるのはもちろんですが、薬の効きぐあい、まじめに通えるかなど、その人の運命を左右する要因はいくつもあります。
同じ種類のガンで、似たような病状、そして似たような薬を使っている人は、ひとつのパターンとして多数いらっしゃいます。
でも、その話はあまりしません。
なぜなら、寛解したひとの話をすると、もうそれだけで自分もそうなると決めこんで、安心してしまい、食療法をおこたったり、施術回数を気ままに減らしたりするひともいらっしゃるためです。それではいつまでもズルズルとガンを引きずることになってしまいます。ガンをなめてるとほんとうに痛い目を見ます。
また逆に悪化していった例について話すと、ショックと悲観のワナに落ちこんでしまう場合もあります。なので、どちらにせよ症例の話はなるべくしないようにしています。
また、症状がいくつかおさまってほとんど生活に支障がなくなったような状態になっても、それは好転し始めたにすぎず、寛解したわけではありません。安心してはいられません。
安心しきっていると深い落とし穴にはまります。ガンの落とし穴は大変深いですから、もし落ちてしまっているような方がいたら、できるだけ早くそこからはい上がってしまわなければなりません。
施術の継続、中止等については、こちらでは何の強制もしませんので、常に体感で施術の効きを確認しながら、続けるかどうかご自分の判断で決めていってもらうということになります。
抗ガン剤について
当院の抗ガン剤についての基本的な考えは、使っても使わなくてもどちらでもよいというものです。肺ガンの場合、施術だけで寛解まで至りますと、あとに石灰化したものが残ったりします。そういうものは、それ自体が肺にとってのストレスになるからでしょうか、のちにそれが新たなガンのもとになることもあるそうです。その点抗ガン剤はガンをきれいに、たぶん痕跡も残さず消滅させてくれるので、その点は施術だけでやるよりずっといいように思います。
抗ガン剤の種類については斟酌することはありません。病院で検査を受け、最適なものをチョイスしてもらったわけでしょうから、私としては考える必要は全然ないわけです。
ただ、分子標的薬については、経験上とくにこれはほぼ誰にでも効くと確信できるものがあったので、いくつかご紹介しています。
→ 分子標的薬のページ
同じ抗ガン剤を使っても食生活や体力など、条件が違えば違う結果が出てくるのはあたり前です。統計なんかとってもしょうがないと思ってます。
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