自己免疫疾患
LSEや関節リウマチなどの膠原病をふくむ「自己免疫疾患」のことを、私は「やり遂げねば症候群」と呼んでいます。それはどういう意味かというと、この病の発生には仕事や家事、あるいはそれに類する作業ごとにおいて、自分への強制、それも休みない連続する過度の強制といった心的動作が大きくかかわっているとしか考えられないからです。
自分自身による強制なのか、所属する組織による強制なのか、それはどちらでも結果は同じでしょう。
「こんなに一生懸命真面目に生きてきたのになんで?」
と、そんな感想をもつ患者さんは多いでしょうが、生活の要請、職場の要請などにより、ハードなスケジュールを組み立てざるを得ず、そのハードなスケジュールに自分を閉じこめ、その状態に自分を順応させてきた、その結果がこうした病の発症なのだと、まず知るべきです。
つまり「こんなに一生懸命真面目に生きてきた」ことが病気のもとだったのだと・・
まじめに働いていさえすればバチは当たらない、ととりわけ日本人はそんな勝手な思いこみの中で生きてしまう人たちなので、こうした事態にハマりがちです。
そして、これこれこれだけはきちんとやりとげなければならない、それは自分の義務なのだといったような思いこみによって、ゆったり休む時間帯、完全に逃避するひとときをもうけることなく、寝るまで仕事起きればまた仕事といった、ほぼ緊張の連続するタイムスケジュールで生活していくと、多大なストレスがあっというまに蓄積していき、病気発症の確率は飛躍的に高まっていくでしょう。
コーヒーを何杯も飲みながら夜中の2時3時まで仕事して100パ-セントやり遂げる人生をやめて、もし11時ごろ70パーセントできたのなら、そこでパソコンの電源を切って寝てしまうという生活に切り替えていたら、こうした病気は発病しなかったかもしれません。
おそらく、100パーセントやり遂げた人を待っているのは次の仕事の山でしょう。
そうして、次の日もまたその次の日もと、えんえんと続く終わりのない仕事の連鎖の中に埋没させられていき、やがてどこにも逃げ場のない袋小路に入りこんでしまうわけです。
自分がそういう袋小路に追いこまれた実験マウスのようなものだと気づけばまだいいのですが、気づかずに、あるいは気づいていても気づいてないフリをしながら、そんな生活を続けていきますと、やがて、「やり遂げねば症候群=自己免疫疾患」を発症します。
ちょっとお日さまにあたるだけでひどい倦怠感が襲ってきて、熱が出、頭が痛い、お腹が痛い、関節全部が痛くなるというぐあいに(SLEとして)出るのか、目や口や鼻の中、はては外陰部や膣にいたるまで、湿っていなくてはならないところがことごとく乾き、触ると痛いといったぐあいに(シェーグレン症候群として)出るのか、発熱してだるく、全身の筋肉が痛み、歩行もままならず、杖をついてトイレにいくようになったり、手先が真っ白になったり、階段をあがろうとしたら足が上がらず、つまづいて顔面を打ったりといったぐあいに(筋炎として)出るのか、だれにも予想はできません。
それもそのはずで、「やり遂げねば」生活を続けていくうちに、自分の身体全体の細胞、つまり血管、粘膜、臓器、皮膚などは、すでに自分自身によってこっぴどく傷つけられており、そのどこから発病するのかはわからないのです。
仕事やストレスが多いと興奮状態が持続し、交感神経が活発なままになるので、それに応じて好戦的な白血球(顆粒球)が増えます。この白血球はばい菌などをやっつけてくれるので、多ければ多いほどありがたいような気はしますが、この顆粒球は寿命が数日と短いので、結果は逆に残念なことになります。その死骸は大量の活性酸素を放出するのだそうで、それによって体の中を大いに傷つけてしまっているというわけです。
しかも、興奮状態が持続することで、つくらなくていい顆粒球までどんどん増殖してつくってしまっているので、よけい始末の悪いことになります。
それをすっかりもとにもどしてやるには袋小路のマウスになってしまった自分を、哀れと思ってその袋小路から救い出してやり、興奮状態から撤収させるしかないのです。
自己免疫疾患への施術加療
さて、ここまで上に記したのは私の存念、私の「自己免疫疾患」論にすぎません。それはそれとして、施術の現場では対症療法に徹します。
なぜかといえば、自己免疫疾患を治療してもらいたいとして受診に来られる方のほとんどは、出ている苦しい症状を軽減してほしい、そうしてくれさえすればまたおなじ仕事、生活が続行できるんだと、そんなふうに思っていらっしゃるからです。
こういう方々に、袋小路から飛び出すように、つまり人生の方向を大きく切り替えるように強制することはありません。
それはご自身が決めるべき問題。
したがって、施術は熱を取り、倦怠感を取り、関節の痛みを取ることが目標になります。
そのためには関節や肝臓などに術力をかけるのも末梢的には必要ですが、そんなことは一時しのぎにしかなりません。それよりも先に自律神経の整復が肝要と思っています。
各施術時間により、パワーをかける部位はその都度違うかもしれません。
それは一番ひどく症状が出ている部位であることが多いわけですが、それと並行して、それまでどの部位に施術したらどのような反応が出たからといったことを反芻しながら、その患者さんへの施術の流れをふまえても行います。
自己免疫疾患の人の施術の場合、症状を聞くとだいたい熱が出やすい、関節が痛い、といったものが多いです。
また、倦怠感もあって身体を動かそうとするとけだるく、また節々も痛くなるので思うように動けないといったことをうったえられます。
また、怠けていると人に思われることもよくあって、それが精神的につらいとのこと。
所属する組織や家庭と自分自身との相互に納得してやってきたことですから、それが変調をきたしたとは言い出しづらいかもしれません。
しかし、同じ仕事を続けるのであれば、症状の重軽にもよるでしょうが、仕事量は半分ないしそれ以下が適量でしょう。
いずれは同僚たちにもわかってもらえると信じて、思いきって仕事の量をへらさなければ・・
実例、間質性肺炎と他の自己免疫疾患との併発
間質性肺炎はしばしば他の自己免疫疾患と併発します。以下の例は関節リウマチとの併発です。
パーキンソン症候群
60代女性。当初、不眠とパーキンソン症候群らしい、歩こうとしても足が前に出ない、なんでもない平たんな地面に足がつっかかって前につんのめりそうになるといった症状をうったえていらして、週1回の施術をはじめました。
家業がお忙しくいつも仕事に追いまくられているとのこと。
寝る時間がきても、頭や体が興奮しているみたいで眠れないので寝酒を飲むのだとのこと。それもだんだん量がふえているとのこと。
なるほど、それでは悪いものが身体の中にたまるでしょうと思いました。
なんどか施術をくり返すうちには、それらの症状は軽快していきましたが、まだすっかり寛解というふうにもなっていないうちに、こんどは呼吸が苦しくなってきて、病院で調べてもらったところ、間質性肺炎と診断されたとのこと。
ずいぶんいろいろな病気に悩まされるひとですが、たしかに施術してみると肺からはゴボゴボいう液体の音がしますし、息苦しさもあるとのことで、間違いなさそうでした。その音というのはたぶん肺の溶けたあとの間質液のしぼり出される音で、間質性肺炎への施術加療の際にはよく耳にします。
不眠とパーキンソン症候群のほうがおさまりつつあったので、こんどはこいつだとばかり、肺を徹底してやりました。
関節リウマチ
それからしばらくは間質性肺炎への施術に没頭してましたが、やがてある日関節リウマチも発症してしまったと言われ、そんなにいろんな病気に罹って、ほんとかなと思いましたが、診ればたしかに手指の爪が、ねじれるように変形しはじめていて間違いありませんでした。施術回数は相変わらず週1回のままでしたが、1回1時間半にのばしての施術へと変わりました。これら疾病を施術していると、あっちもこっちもやらねばならず、つい夢中になってしまって、ときを忘れ、しばしば1時間をオーバーしてしまうからでした。
間質性肺炎のゴボゴボいう音は次第に小さくなっていきましたが、なかなかやまず、けっこうしぶとかったです。
関節リウマチのほうは、お医者で処方されたオレンシアという飲み薬を併用なさいました。
病気の危険度からいえば間質性肺炎のほうが命にかかわるので、危険でしたが、関節リウマチも指爪の変形が待ったなしなので、奥さんとおなじように、私も追いまくられてるような施術でした。
しかもいつもそのふたつふだけというわけではなくて、パーキンソン症候群や不眠もときおりぶり返すので、1時間半でもオーバーしそうになるくらいでした。
いちばん最初の不眠やパーキンソン症候群への施術から数えると、全部の症状が寛解したのは3年以上たってからだったかと思います。
関節リウマチのお医者さんには、
「○○さん、もう寛解ね。よくなおったわ。オレンシアが効いたのね」
と言われ、
間質性肺炎のお医者さんには、
「もう寛解です、というより寛解以上です。だけど不思議だねえ、よくこぎつけたよ、ここまで。ふつう間質性 肺炎てのはなおらない病気なんだけどねえ」
と言われたそうです。
爪乾癬
こうして全部の疾病が終わったかなと思ううち、こんどは爪が浮く爪乾癬というのも出てしまいました。これも自己免疫疾患だそうです。自己免疫疾患はどこまでも彼女を追いかけてくるようです。
さいわいこれは関節リウマチなどよりは軽い病気のようで、しばらくやっていくうちに10本すべての手指に出ていたのが改善につれて1本また1本とへっていき、いまではもうあと2本に。施術時間も1時間にもどしてます。
そして、爪乾癬の施術をしながら、全身のメンテナンス施術を続けています。
患者さんはおなじ仕事をずっと続けたままでなんとかなりました。
「仕事をやりながらでも大丈夫かしら」とお考えの方、悩むより先にいちどいらしてみてください。
潰瘍性大腸炎
実例 潰瘍性大腸炎はなおったかどうかわかりませんが、こちらに1例
その他にもう2例ありましたが、いずれも寛解までいたる前におやめになり、中途半端な結果に終わってます。
自己免疫性肝炎
実例 こちらに1例ほぼ寛解までいけたのではないかと考えていますが、そのあたりでおやめになったので、やや心配は残りました。
自己免疫疾患に対する決定的な予防法や治療薬はありませんが、「免疫抑制薬物療法」によって症状をコントロールする治療が行なわれています。
自己免疫疾患に対する新規治療法を発見
東京大学定量生命科学研究所
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