当院では、ハリ(鍼)治療は併用しないでくださいと申しております。
なぜかというと、鍼は神経を麻痺させ、痛みを感じなくさせるもののようだからです。
以前、鍼で胃ガンがほとんど寛解したというふれこみの方を診たことがありますが、すでに副腎に転移しており、ひどい状態でした。
寛解したのだという胃に手をあてると、最初たしかに手ごたえを感じることはなく、ほんとうに寛解したのだろうと思えました。
しかし、それは長くは続きませんでした。
しばらくすると、真っ赤な顔をして、
「痛い痛い!」
と、施術台の上で、のた打ち回りはじめたのです。
びっくりして手を離し、気をとりなおして、おなじ胃の少し離れた別のところに手をあてると、またまた真っ赤になって、
「痛い痛い!」
・・・
それのくり返しを4、5回もやったかと思います。
どうやら、鍼による麻痺が、私が手をあてることによって、そのときだけ解除されるようで、手をあてたところだけがものすごく痛いようでした。
そうした状態では、胃に施術することはできず、わずかに、転移しているという副腎にのみ軽く手あてしただけで、終わってしまいました。
ほとんど、施術にもなりませんでしたが、患者さんは聞きました。
「どのくらい通えばすっかりよくなりますか?」
・・・
ろくに施術させてもらえない状態では、いくら通ったとてわずかな改善すらできるはずはありません。
その旨お伝えし、胃はほとんどすべてやられており、たいへんヤバイ状態であると申しましたが、信じてはもらえませんでした。
彼の見解では、胃はほとんど寛解しており、わずかに副腎に転移しただけ、とのことでした。
それでは、もう寛解したはずの胃が、私が手をあてるとそこらじゅう痛いのはなぜなのかと尋ねましたが、こたえはありませんでした。
そして、この方はそれきりいらっしゃってません。
このように、鍼は痛みを麻痺させるようです。それはたいへんやりにくい状況を生み出します。
つまり、麻痺してしまったのでは、身体はたとえ困った状態であっても、SOSを発することができず、私の手には何も伝わりません。これでは施術できないのです。
したがって、現在は鍼との併行治療はすべてお断りしております。
あるいは、痛みを感じさせずよくなったと思いこませることによって、ガンへの恐怖、そしてその恐怖によるストレスを回避させ、それによって改善を図る、といった手法なのかもしれませんが、私にはついていけそうにありません。
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